こんにちは。中華圏の映画が好きなellyです。
今回は2005年~2015年頃に観た、日中合作作品、映画祭作品、日本未公開作品など、ややマイナー(でもないか?)な作品をまとめてみました。2015年に長女を出産してからは、めっきり映画祭や映画館から足が遠のいてしまった私ですが、2009年に上京してからは、映画館にちょくちょく通ったものです。懐かしい…。
今ではAmazonプライム・ビデオなど、多くの動画配信サービスがあって、家でも多くの映画が楽しめますし、アジア系の映画もネットでたくさん観られるいい時代ですね。隠れた傑作を見つけるのも、映画鑑賞の楽しみの1つです。
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単騎、千里を走る。
中国・日本 / 2005年(日本公開2006年)/ 108分
監督:張芸謀(チャン・イーモウ)/ 降旗康男
出演:高倉健 / 寺島しのぶ / 邱林(チュー・リン)/ 李加民(リー・ジャーミン)/ 蔣雯(ジャン・ウェン)/ 楊振波(ヤン・ジェンボー)/ 中井貴一
単身、中国雲南省を訪れた日本人の父親を通して、父と子のつながりを描く中日合作映画
張芸謀監督が、最も尊敬する俳優・高倉健さんと共に作った話題作。タイトル『千里走単騎』は、京劇の演目の1つで「三国志」に由来する話ですが、映画の舞台は現代の中国と日本。
高倉健さん演じる高田は、妻を亡くし、息子とは疎遠になった孤独な男。息子が末期がんであることを知り、息子がやり残した仕事(中国の仮面劇『単騎、千里を走る』の撮影)のために単身中国を訪れます。しかし息子が約束した役者・李民加は現在刑務所の中にいて撮影できない。言葉も通じない環境の中、高田の熱意が中国人たちに伝わっていきます。
高倉健さんの不器用な父親役がとてもいい。余命わずかな息子と直接話せばいいものを(息子にも拒否されたとはいえ)、劇の撮影が、自分が息子にしてやれるたった1つのことだと考え、一人中国に行ってしまう。しかもその撮影は、実は息子にとってそれほど重要なことではなかったという皮肉。でも結果的にはこの父親の行動で息子に気持ちが通じるところに、この映画のメッセージを感じました。
中国の役所の李主任、刑務所の陳所長、ガイドの2人など、現地で協力してくれる中国人たちのやさしさも、この映画の見所です。特に、片言日本語ガイドの邱林さんがいい味を出していて、言葉が通じない故のやりとりが滑稽で笑いを誘います。そして日本語は片言でも、中国語ではとてもいいことを言っているのがまた魅力。
寡黙で不器用。でも現地で出会った少年との交流など、随所に高田の優しさがにじみ出ていて、高倉健さんの演技はさすがです。当時74歳だった健さんは、単身で中国の撮影隊に加わったそうで、現地の人々との交流で与えた影響も大きかったとか。映画を通した素晴らしい文化交流ですね。
我が大草原の母
中国 / 2010年(日本公開2011年)/ 100分
監督:寧才(ニンツァイ)
出演:娜仁花(ナーレンホア)/ 圖門巴雅爾(トゥメン・バヤル)/ 哈布日(ハブリ)/ 伊日貴(イリグイ)
内モンゴルの大草原に生きる孤児たちと母の大きな愛を描く
2011年の第12回 NHKアジア・フィルム・フェスティバルで公開された作品。1960年代、飢餓のため親に捨てられ、遠く離れた内モンゴルの人たちに養子として引き取られた上海の子供たち。文化大革命を背景に、たくましく生きる孤児たちとの親子愛を描いた作品です。
中国にこんな歴史があったことを知らず、まず衝撃を受けました。そして内モンゴルの大草原の美しさ、そして人々の心の広さに感動します。モンゴルの母親役のナーレンホアさんが本当に素敵で、こういう、強く優しくたくましい母親になりたいと、当時独身だった私は見ていて思いました。きっと、子を持つ親なら涙なしには見れない作品だと思います。
転山
中国 / 2011年(日本公開2011年)/ 90分
監督:杜家毅(ドゥ・ジャーイー)
出演:張書豪(チャン・シューハオ)/ 李暁川(リー・シャオチュアン)/ 李桃(リー・タオ)
兄の遺志を継ぎ、自転車で苛酷な旅をする青年の成長する姿が美しい
2011年の第24回東京国際映画祭(コンペティション部門)で公開。当時、チベットの美しさにハマっていたので観た作品です。台湾人の青年が、亡き兄が果たせなかった夢を実現すべく、自転車で中国大陸の麗江からチベットのラサを目指すという物語。英語タイトルの「KORA」とはコルラ(巡礼)のこと。
チベットの雄大な景色はもうため息が出るほどの美しさですが、主人公シューハオの旅は、富士山ほどの高さの山を何度も越えながら、冬の厳しい自然、転落事故、どう猛な野生動物など、次々と襲う危険と闘う苛酷なもの。それ故、随所で登場する心あたたかいチベットの人たちや、車で通りがかる人たちのやさしさに癒されました。
主人公の青年が、旅を通して成長していく姿が何とも爽快で、主演のチャン・シューハオ君は、「本当に前半と同一人物?」と思うくらい、どんどん男らしく、カッコイイ青年になっていきます。1人の青年の成長をこれほど鮮明に映し出している映画はなかなかないと思います。
チベットの子どもたちが楽しそうに学校に通う姿や、修行中の若い女性との、いっさい会話のない交流など、
チベットの魅力も上手に描かれていて、異文化に触れられるのもまさに映画の醍醐味だなと改めて感じた作品でした。
アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ
中国 / 2013年(日本公開2013年)/ 112分
監督:陳可辛(Peter Chan)
出演:黄晓明(ホァン・シャオミン)/ 邓超(ドン・チャン)/ 佟大为(トン・ダーウェイ)
中国人の若者の上昇志向、自由への渇望を描いたすばらしい現代映画
2013年の東京・中国映画週間で公開。中国人なら誰もが知る英語教育の第一人者となった「新東方学校」を創設した3人の友情サクセスストーリー。「合伙人」は「パートナー」のことですが、共同経営者という意味で、昨今の中国では耳にする頻度が高い言葉のようです。
1980年代、アメリカにどれだけ憧れようが、ビザをとることが難しい時代。アメリカに行くことが許された者の苦しみ、中国に残らざるを得なかった者の反骨心、運命に導かれ再び一緒の道を歩む3人が、ラストでアメリカ人と重要な交渉に挑むシーンは感動の一言です。
とかく拝金主義だと言われる中国人ですが、これだけのむき出しの努力には、尊敬の念を抱かざるを得ません。また主演の3人は今や押しも押されぬ中国映画界の大スターであり、揃い踏みの本作の貴重さは、監督のピーター・チャン含め形容し難いものがあります。
重返20岁
中国・香港・台湾・韓国 / 2015年(日本公開2015年)/ 131分
監督:陈正道(チェン・ジェンダオ)
出演:杨子珊(ヤン・ズーシャン)/ 归亚蕾(グァ・アーレイ)/ 陈柏霖(チェン・ボーリン)/ 鹿晗(ルハン)
韓国版と比肩するコメディ&感動の傑作
中国で大ヒットした作品。2014年の韓国映画『怪しい彼女』のリメイクと思われがちですが、実際は、同じ台本で中韓同時に公開をしようとしたものの、中国版の製作が遅れたとのこと。韓国版はシム・ウンギョンの怪演っぷりに驚かされましたが、中国版も負けておらず、2013年のメガヒット作『So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ(致我们终将逝去的青春)』でヒロインを演じたヤン・ズーシャンがとにかく素晴らしい。
コメディ、シリアス、そして歌まで完成度が高く、日本人ならおなじみのテレサ・テン「つぐない」のシーンにはグッと引き込まれます。老婆が20際に若返るというファンタジーですが、前半はコメディで笑わせ、ラストは大変なドラマが涙を誘います。
日本でも多部未華子さん主演映画『あやしい彼女』としてリメイクされました。
ひだりみみ
中国 / 2015年(日本公開2015年)/ 117分
監督:蘇有朋(アレック・スー)
出演:陈都灵(チェン・ドゥリン)/ 欧豪(オウ・ハオ)/ 杨洋(ヤン・ヤン)/ 马思纯(マー・スーチュン)/ 段博文(ドゥアン・ボーウェン)
昨今のブーム、‟振り返り”映画の代表作
2015年の東京・中国映画週間で公開。人気作家・饶雪漫(じょう せつまん)の代表作を映画化したもので、台湾のスター俳優アレックス・スーの初監督作品です。
ヒロインは、左耳が聴こえない17歳の女の子。物語は彼女を中心に、同級生たちの友情、恋愛、進学が絡まり合いながら進んでいきます。2013年の『So Young』、2014年の『匆匆那年(君といた日々)』然り、中国の若者が学生時代を振り返り、そこから現在までの波乱万丈なあれこを回想するというフォーマットは昨今のブームのよう。いずれの作品も大ヒットとなっていますが、中国の若者はこれらを見て何を思うのだろう、と興味を惹かれる作品です。
咱们结婚吧(結婚しようよ)
中国 / 2015年(日本公開未定)/ 126分
監督:刘江(ラウ・コン)
出演:高圆圆(カオ・ユアンユアン)/ 姜武(ジャン・ウー)/ 李晨(リー・チェン)/ 郑恺(チェン・カイ)
豪華共演!男女4組によるオムニバスストーリー!
中国の人気テレビドラマが映画化された作品で、日本では未公開。中国映画では珍しい、4組の男女によるオムニバス形式のラブストーリーで、『ラブ・アクチュアリー』を彷彿とさせます。
子持ちの中年男性、一度は離婚を決意した30代?夫婦、望まぬ結婚を控えた20代女性など、様々なバリエーションがありながら、最後は誰もが「結婚しようよ」とストレートに愛を伝え、ハッピーエンド。ここ数年一気にトップクラス入りしたカオ・ユアンユアンはじめ、豪華キャストが売りの本作は、何も考えずハッピーになりたい方にオススメです。
まとめ
いかがでしたか。全国的に上映されていない作品や、日本で公開されていない作品など、ここに紹介していない優れた作品は当然まだまだあるはず。それだけ中華圏の映画の勢いはとどまるところを知りません。
映像翻訳に携わる中華映画ファンの一人としては、いつかそんな優れた作品を発掘し、日本のファンを増やしていきたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。