こんにちは、中華圏の映画が好きなフリーランス映像翻訳者のellyです。
これまで、「中国映画編」「香港・中国カンフー映画編」「チャン・イーモウ監督編」の記事でオススメ作品を紹介してきましたが、今回は「台湾映画」に絞ってご紹介します。
台湾映画の魅力は、何と言っても爽やかさ。映像も音楽も、俳優たち(特に若者)も爽やかな作品がいっぱい。中国(大陸)や香港とはまた違った魅力のある台湾映画をお楽しみください。
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藍色夏恋
台湾 / 2002年(日本公開2003年)/ 84分
監督:易智言(イー・ツーイェン)
脚本:易智言(イー・ツーイェン)
出演:陳柏霖(チェン・ボーリン)/ 桂綸鎂(グイ・ルンメイ)
高校生3人の男女の、淡く切ない初恋を描いた青春映画
台湾で大ヒットした青春映画。登場人物たちの若さと台湾の緑の美しさで、とにかく爽やかな印象が残る作品でした。親友が恋する相手が自分のことを好きになってしまうというよくある三角関係の話のようで、実は意外な秘密が隠されている。そのため最後は切なさが残るのですが、恋人でも友達でもない二人が、将来に希望を抱きながら自転車で走り出していく姿はキラキラしていました。
ピアノのBGMも素敵だし、エンドクレジットの、Frenteが歌う『Accidently Kelly Street』がそんな爽やかな余韻をそのまま残してくれます。
個人的に好きなのは、親友のユエチェンがチャン・シーハオと両思いになれるように、ボールペンのインクがなくなるまで名前を書くシーン。結局失恋し、涙ぐみならがも書き続ける名前が途中から「木村拓哉」に変わるところが、悲しいけれど微笑ましかったです。
ヤンヤン 夏の思い出
台湾・日本 / 2000年(日本公開2000年)/ 173分
監督:楊徳昌(エドワード・ヤン)
脚本:楊徳昌(エドワード・ヤン)
出演:呉念真(ウー・ニンジェン)/ 金燕玲(エレイン・ジン)/ 張洋洋(ジョナサン・チャン)/ 李凱莉(ケリー・リー)/ イッセー尾形
悩みを抱えバラバラになりつつも、1つになっていく家族のエピソードを丁寧に描く
台湾の著名な映画監督、エドワード・ヤン監督の作品です。長くてまったりとしていますが、問題を抱えてバラバラになっていくある一家の一人ひとりのエピソードが上手く絡み合い、最後は1つにまとまっていく様子は見ていてさすがだと思いました。
台湾の女性たちが、突然ヒステリックな感じになるところがいまいち共感できませんでしたが、一方で、格言のような名ゼリフがたくさん登場するので思わずうなずいてしまったり。
このジャケットのヤンヤン少年はちょっと生意気な印象ですが、実際のヤンヤンはとっても愛くるしかったです。このヤンヤンをもっと登場させて欲しかったなと個人的には思いました。
河
台湾 / 1997年(日本公開1998年)/ 115分
監督:蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)
出演:李康生(リー・カンション)/ 苗天(ミャオ・ティエン)
首が曲がる奇病にかかった少年と、崩壊した家族の孤独感、空虚感を描く
これはまったく爽やかではありません。ツァイ・ミンリャンという有名な監督の作品なので観てみましたが、好き嫌いが別れる作品だと思います。
セリフが少なく、音楽もほとんどなく、淡々と物語が進んでいきます。そして、冒頭の死体役のシーンから最後までずっと、首が曲がったまま元に戻らない主人公が不気味です。
ゲイ・サウナに通う父、不倫相手の横でアダルトビデオを見る母、と設定もめちゃくちゃですが、この映画が伝えたいことは、父、母、息子の孤独感、空虚感と、息子の奇病を通してわずかに回復した家族の絆なのでしょうか。
私の知人は高く評価していた作品なので、オススメの1作に加えました。
海角七号/君想う、国境の南
台湾 / 2008年(日本公開2009年)/ 130分
監督:魏徳聖(ウェイ・ダーション)
脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーション)
出演:范逸臣(ファン・イーチェン)/ 田中千絵/ 中孝介 / 馬如龍(マー・ルーロン)
台湾で大ヒット。過去と現代が絡んだ台湾人と日本人のラブストーリー
公開当時、台湾で『タイタニック』に次ぎ歴代映画興行成績第2位を記録したヒット作。
…と期待しすぎて観たせいか、前半の田中千絵さんのヒステリックな日本人役に何となく不自然さを感じたせいか、あまり感情移入はできませんでしたが、テンポが良くて飽きることはなく、特に最後のライブシーンはとても良かったです。
台湾人男性と日本人女性の現代のラブストーリーに、敗戦によって引き裂かれた日本人男性と台湾人女性の60年前の恋文が絡んでくるという物語。音楽と映像と題材はいいのに、個人的にはちょっと惜しいなと思った作品でした。
台湾と日本の戦時中の関係をあまり知らないので恥ずかしいのですが、きっと実際に、このような悲しい恋の物語があったのでしょうね。舞台となった台湾最南端の海辺の田舎町はとても南国的な雰囲気で、台湾にもこんな町があるんだなと行ってみたくなりました。
靴に恋する人魚
台湾 / 2006年(日本公開2006年)/ 95分
監督:李芸嬋(ロビン・リー)
脚本:李芸嬋(ロビン・リー)
出演:徐若瑄(ビビアン・スー)/ 周群達(ダンカン・チョウ)/ 堂娜(タン・ナ)
名作童話を散りばめた、台湾のラブファンタジー
アンディ・ラウが提唱した、若手映画監督支援プロジェクト「FFC」の第1弾作品。
ビビアン・スーがとにかく可愛い。本当に可愛い。コロコロ変わる新しい靴と、パステルカラーの洋服は、見ているだけで楽しくなります。全体を通して日の光が当たったような透明感のある映像も、彼女の美しさを引き立てていました。台湾映画って、色がキレイな作品が多いです。
ストーリーは、ハッピーもあればアンハッピーもあり。おとぎ話のようでほのぼのした気分が味わえます。
夢遊ハワイ
台湾 / 2004年(日本公開2006年)/ 100分
監督:徐輔軍(シュー・フーチュン)
脚本:徐輔軍(シュー・フーチュン)
出演:楊祐寧(トニー・ヤン)/ 黄鴻升(ホァン・ホンシェン)/ 張鈞甯(チャン・チュンニン)
台湾の兵役中の若者を題材にした、ハートフルな青春映画
台湾の兵役中の男の子が主人公ということで、とても新鮮な作品でした。タイトルに反し「ハワイ」は関係ないのですが、主人公の青年たちは、まるで夏休みを過ごしているかのような雰囲気。厳しい軍隊というよりは、ユルい感じに描かれています。
主役のトニー・ヤン君の自然な演技と純朴な青年の姿は、見ていてほほえましいものがありました。シンシン(受験勉強のしすぎで精神病院に入ってしまった女の子)とはその後どうなったの?と思わせつつも、爽やかさが残る終わり方。
何気ないところですが、軍の上官とのやりとりも、台湾の若者が大人になっていく過程を見ているようで清々しかったです。
言えない秘密
台湾 / 2007年(日本公開2008年) / 102分
監督:周杰倫(ジェイ・チョウ)
脚本:周杰倫(ジェイ・チョウ) / 杜緻朗(トー・チーロン)
出演:周杰倫(ジェイ・チョウ)/ 桂綸鎂(グイ・ルンメイ)/ 黄秋生(アンソニー・ウォン)/ 曾愷玹(アリス・ツォン)/ 宇豪(ユーハオ)
ジェイ・チョウ初監督作品。ピアノを軸とした切ないファンタジック・ラブストーリー
この作品で、監督・脚本・音楽・主演の4役を務めたジェイ・チョウ。つっこみ所はあるけど、その天才ぶりをみせつけてくれました。
映画の舞台は、ジェイ・チョウの母校でもある淡江音楽学校。前半は、観ているこっちが恥ずかしくなるほどの純愛青春モノで、グイ・ルンメイもジェイ・チョウも爽やかだし、映像もキレイ。
それが後半、突然思わぬ方向に展開していきます。ファンタジーというか、文字が浮かび上がるシーンなんかはもはやホラー。前半の雰囲気が良かっただけに、後半はちょっと戸惑っちゃいましたが、20代でこんな映画を作ってしまうジェイ・チョウはやっぱりスゴイ。
吹き替えなしという、ジェイ・チョウとユーハオのピアノバトルは必見です。
九月に降る風
台湾・香港 / 2008年(日本公開2009年)/ 107分
監督:林書宇(トム・リン)
脚本:林書宇(トム・リン)
出演:鳳小岳(リディアン・ヴォーン)/ 張捷(チャン・チエ)
/ 初家晴(ジェニファー・チュウ)/ 王柏傑(ワン・ポーチェ)
台湾映画らしい爽やかな空気感で描く、高校生9人のほろ苦い青春
爽やかな空気感、美しい映像、まさに台湾映画。2008年の作品ですが、1976年生まれの監督の青春時代であろう1996年を舞台とした作品で、ポケベルとか、日本のアイドルのポスターとか、懐かしさがあふれています。
タイトルの 『九降風』 は、9月に吹く季節風のこと。その時期、台湾は卒業・入学シーズンなので、この季節風は、日本で言う「桜」のような存在にあたるそうです。
授業をサボり、タバコを吸い、バイクに乗り、悪ふざけを繰り返す高校生たち。コラコラ、と思いながらも、これも青春なのだろうと微笑ましく観ていましたが、最後の最後は、「成長した証」として、できればタバコは吸ってほしくなかったかな。
ストーリーはやや物足りなさを感じましたが、7人の男子学生の個性がキチンと描き分けられていて、若い俳優さんたちの魅力に引き込まれました。
モンガに散る
台湾 / 2010年(日本公開2010年)/ 141分
監督:鈕承澤(ニウ・チェンザー)
脚本:鈕承澤(ニウ・チェンザー) / 曾莉婷(ツォン・リーティン)
出演:阮經天(イーサン・ルアン)/ 趙又廷(マーク・チャオ)/ 馬如龍(マー・ルーロン)/ 鳳小岳(リディアン・ヴォーン)/ 柯佳嬿(アリス・クー)
極道に身を置き散ってゆく若者の姿を描く、台湾の大ヒット映画
台湾で2010年の興行成績第1位を記録する大ヒットとなった青春極道ムービー。なかなか見応えがあり、若手俳優らの熱い(とにかく熱い)演技がすばらしい。かなり暴力シーンが多いのは、極道モノだから仕方ない。
義兄弟の契りを結んだ5人の高校生が極道の道に進み、大人の極道の抗争に利用され巻き込まれていく。5人の友情、裏切り、葛藤などが切なく描かれています。
「なぜ戦うのか、戦うことの意味は何なのか?」
極道の世界というのは、私には決して理解できる世界ではないですが、家族の絆も友達の絆もなく、いじめられっ子だった主人公が、ようやく友達を得て、自分の居場所を見つけ、親分を慕い、成長していく姿はとても良かった。親分と主人公との距離が縮まる、カラオケのシーンの、台湾の演歌っぽい歌も個人的には好き。
原題は単に 『モンガ』 なのですが、観終わった後、『モンガに散る』 という邦題はこの作品を上手に表しているなと思いました。
光にふれる
台湾・香港・中国 / 2012年(日本公開2014年)/ 110分
監督:張榮吉(チャン・ロンジー)
脚本:李念修(リー・ニエンシウ)
出演:黄裕翔(ホアン・ユィシアン)/ 張榕容(サンドリーナ・ピンナ)/ 李烈(リー・リエ)/ 許芳宜(ファンイー・シュウ)
盲目の天才ピアニストとダンサーを夢みる少女の交流と成長を描く感動作
仕事の関係で繰り返し観ましたが、何度観ても(観るごとに)ジーンとくるものがある、すばらしい作品です。
本人役を演じているホアン・ユィシアン君の、口調や表情からにじみ出る優しさ。母親役のリー・リエさんと、シャオジエ役のサンドリーナ・ピンナの女性陣のユィシアンを見守るまなざしの優しさ。ルームメイトのチンと、ドリンク店の店長という、愛すべきキャラの2人のおデブさん。この作品は優しい雰囲気があふれています。
ユィシアンのピアノと、サンドリーナ・ピンナのダンスだけでも観る価値はあるのに、2人の青春の光と影が見事に交差し、平凡なサクセスストーリーの枠を超えています。
かなりオススメ度が高い作品。SM部の音楽センスも必見です。
あの頃、君を追いかけた
日本でもリメイクされた、男女7人の10年に渡る青春、友情、恋の物語
台湾 / 2011年(日本公開2013年)/ 110分
監督:九把刀(ギデンズ・コー)
脚本:九把刀(ギデンズ・コー)
出演:柯震東(クー・チェンドン)/ 陳妍希(ミシェル・チェン)/ 郝劭文(スティーブン・ハオ)/ 荘濠全(ジュアン・ハオチュエン)/ 蔡昌憲(ツァイ・チャンシエン)/ 胡家瑋(フー・チアウェイ)
日本でもリメイク版が作られたことで有名な大ヒット作。台湾の人気作家ギデンズ・コー氏の自伝的小説を自ら映画化した作品です。
ジャケットや前評判からかなり期待して見始めただけに、前半は下品なシーンあり(家の中で全裸の設定も微妙…)、じれったい展開ありで、正直やや冷めた感じで観ていましたが、これは完全にラストでやられますね。チアイーの幸せを祝福するコートンの笑顔にもやられ、見終わった後はため息が出てしまいました。
コートン役のクー・チェンドンくん、劇中どんどんカッコよくなっていってファンになってしまいましたが、2014年に薬物使用で逮捕されてしまい残念。本作は彼の鮮烈なデビュー作です。
まとめ
いかがでしたか?台湾映画によく登場する高校の制服や学校の雰囲気は、日本と似ていて親しみを感じますよね。
こうして改めて記事にまとめると、中国(大陸)作品に比べて、台湾映画は観た数自体が少ないですが、これからも大注目している台湾作品。随時更新していきたいと思います。