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【字幕翻訳者が選ぶ】中国映画おすすめ22作品(第五世代~2010年)

映画

 

こんにちは、中華圏の映画が好きなフリーランス映像翻訳者のelly (@ellyeblog) です。

中国映画好きが高じ、「いつか中国映画を翻訳したい!」との思いで北京に「翻訳留学」に行ったのは今から9年前の31歳のとき。1か月半の滞在中は、中国映画関係の翻訳の授業を個人レッスンで受け、また「北京電影学院」や「中国電影博物館」を見学(観光)するなど、中国映画の世界にどっぷりハマった時期でした。そのおかげか帰国後は、英日に加えて中日の映像翻訳の仕事も少しずついただけるようになった私です。

今回は、そんな私がこれまでに観た中国映画の中から、特に印象に残っている作品をご紹介。なお張芸謀(チャン・イーモウ)監督作品は好きな作品が多すぎたので、別記事にまとめました▼

 

 

黄色い大地

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黄土地(Yellow Earth)
中国 / 1984年(日本公開1986年)/ 94分
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
脚本:張子良(チャン・ツーリャン)
出演:王学圻(ワン・シュエチー)/ 薜白(シュエ・バイ)

第五世代(中国新世代映画)の始まりとなった、記念碑的作品

今や中国映画界の巨匠と呼ばれるチェン・カイコー監督のデビュー作で、チャン・イーモウ監督が撮影スタッフとして関わっている貴重な作品。圧倒されるぐらい広大な「黄色い大地」と、それと対比されるかのような人間のちっぽけさが、まず映像として面白い。そして、古い慣習に生きる貧しい村人たちの力強い民謡の歌声が心に響きます。

ラストシーン(=約束どおり再び村を訪れたクー・チン(中央政府の人)を遠くに見つけ、群衆をかき分けながら村の子供が必死に駆け寄ろうとするけどなかなか近付けない、というシーン)は、初め意味がよく分からなかったのですが、これはつまり本作品の主題である、近代化の進む中央と貧しい地方との決して縮むことのない隔たりを象徴しているとのこと。奥が深いですね。

その後のチャン・イーモウ監督作品に影響を与えたと思われる場面がたくさん登場する点も興味深かったです。

ストーリー1939年初春。中国陝西省北部の黄土地帯の寒村に、八路軍兵士で文芸担当のクー・チンが民謡採集のため廷安からやってきた。ちょうど村では、10代前半の少女が売られていく売買婚が行われていた。その儀式をじっと見つめる少女ツイ・チャオは、次が自分の番だということを知っていた。クー・チンは、寡黙な父と頭の弱い弟と3人で暮らすツイ・チャオの家に泊ることになった。ツイ・チャオはクー・チンに民謡を教え、クー・チンはツイ・チャオに廷安の生活や時代の変化を教える。廷安には髪の短い女兵士がおり、女性でも文字が書け、自分の意志で結婚相手を選ぶことができると聞いてツイ・チャオの目は輝いた。クー・チンが廷安に帰る日、ツイ・チャオは廷安に連れていってほしいと哀願するが、軍の規則があるから来春迎えに来るとクー・チンは約束する。翌年、ツイ・チャオは見知らぬ男と結婚式を挙げるが、受け入れられず初夜の床を抜け出す。そして、廷安へ行こうと黄河へ小舟を漕ぎ出した。しかし夜の闇の中、彼女の小舟は黄河の濁流にのみこまれていった。

 

太陽の少年

太陽の少年 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

陽光燦爛的日子(In the Heat of the Sun) 
中国・香港 / 1994年(日本公開1997年)/ 128分
監督:姜文(チアン・ウェン)
脚本:姜文(チアン・ウェン)
出演:夏雨(シア・ユイ)/ 寧静(ニン・ジン)/ 王学圻(ワン・シュエチー)/ 斯琴高娃(スーチンカオワー)

文革時代に自由を謳歌した、少年たちのほろ苦い夏の思い出を描く

なかなか見ごたえのある映画でした。文革時代を描いた中国映画というと、社会主義のスローガンや悲惨さに満ちたイメージですが、子どもたちがこんなに自由(ある意味、自由すぎる)を謳歌していたのかという驚きもあって新鮮でした。映像も美しく、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の曲が多感な若者の心理描写とよく合っていました。

本作がデビュー作になるシア・ユイは、オーディションでチアン監督が自分にそっくりな少年を選んだだけあって、確かに似ている。決して美少年ではないですが、年上の女性に憧れる不良少年という役にはピッタリ。同じく、決してスタイルはよくないけれど、ワンピース姿の豊満なヒロインには、女の私も思わず魅了されてしまいました。

ストーリー70年代初頭、文革末期の北京。大人が労働や下放で去った人気のない街は、少年たちの天下だった。14才のシャオチュンは、幼なじみの悪友たちと街を闊歩。合鍵を作って人家に忍び込むことに熱中していた。ある日、忍び込んだアパートで豊満な美少女ミーランに出会い、ひと目で恋に落ちる。二人は暇さえあれば会うようになるが、ミーランを仲間に紹介すると、兄貴分のイクーが接近しミーランを自分の女にする。反抗的になったシャオチュンは妄想をふくらませ、思い余ってミーランの家に押しかけてベッドに押し倒す。二人の仲は終わり、シャオチュンは仲間たちとも距離を置くようになる。月日は流れ、北京の街には30代になったシャオチュンたちの姿があった。軍人幹部の子という特権を生かし、オープンカーで疾走しシャンパンを飲む彼ら。夢か現実か定かではない、あの夏の記憶だけは永遠だった。

 

變臉(変面)この櫂に手をそえて

變臉(The King of Masks)
中国・香港 / 1996年(日本公開1997年) / 101分
監督:吴天明(ウー・ティエンミン)
脚本:魏明倫(ウェイ・ミンルン)
出演:朱旭(チュウ・シュイ)/ 周任瑩(チョウ・レンイン)/ 趙志剛(チャオ・ジーカン)

伝統芸能「変面」を題材に、老人と少女の絆を描いた傑作

数ある中国映画の中でも、特に好きな作品の1つ。とにかく「変面」という中国の伝統芸能の技が凄い!そしてお爺さんと女の子の演技が素晴らしい!お爺さん役の朱旭(チュウ・シュイ)さんは、NHKドラマ 『大地の子』 のお父さん役でも有名な方。やさしい雰囲気がとても好きです。

人身売買という重苦しいテーマを扱っていますが、師弟としての絆、親子としての絆には感動します。

中国映画博物館(北京)でも、この作品は大きく紹介されてましたが、残念ながら日本ではDVDは出ておらず、ぜひまたテレビで放送していただきたいものです。ちなみに、タイトルの漢字が難しいのですが、読み方は「變臉(へんめん)この櫂(かい)に手をそえて」です。

ストーリー1930年代の中国四川省。四川の伝統芸能である面の早替えの名人で「変面王」と呼ばれる老人ワンには、妻も跡継ぎの子どももいなかった。この技は男子しか継ぐことができないため、ワンは人買いから男の子を買い、クーワーと名付ける。クーワーに深い愛情を注ぎ芸を仕込んでいくが、実はクーワーが女の子であることが判明する。失望したワンはクーワーを追い払おうとするが、泣きつかれ、使用人として連れていくことにした。クーワーは利発で芸をどんどん覚えていくが、ある日、誘拐された男の子ティエンシーを見つけて、ワンのもとへ連れて帰った。ワンも喜んで彼を可愛がるが、実はその子は裕福な家庭の子であったため、ワンは警察に逮捕されることになる。クーワーは必死にワンを刑務所から救出しようとし、二人の間には強い絆が生まれていく。

 

始皇帝暗殺

荊軻刺秦王(The First Emperor) 
中・日・仏・米 / 1998年(日本公開1998年)/ 168分
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
脚本:陳凱歌(チェン・カイコー)
出演:李雪健(リー・シュエチェン)/ 鞏俐(コン・リー)/ 張豊毅(チャン・フォンイー)/ 王志文(ワン・チーウェン)/ 周迅(ジョウ・シュン)/ 孫周(スン・ジョウ)

天下統一を目指す秦王の暗殺計画をめぐる壮絶な物語

3時間の長編大作。ですが、1回だけでは人間関係が把握しきれなかったので、2回観てしまいました。スケールの大きさと豪華俳優人の演技、そしてドラマがしっかり融合していて面白かったです。

構想8年、製作費60億円、製作期間3年。この映画のために建てられたという秦の宮殿「咸陽宮」もこれがセット!?と思うくらい巨大でビックリします。

チェン・カイコー監督自身、息子に殺される重要な役を演じているのですが、監督は文革時代に実の父親を糾弾した経験があるそうで、そんな心の傷が滲み出てか、素晴らしい演技をしていました。豪華キャストの中、個人的には暗殺者役のチャン・フォンイーさんが良かった。でも一番印象に残ったのは、冒頭ですぐに死んでしまう盲目の少女を演じたジョウ・シュンさんでした。

エンドクレジットで流れる小室哲哉さんプロデュースの主題歌も良いのでじっくり余韻に浸れます。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm14024374
(日本語版+中国語版が聴けます)

ストーリー紀元前3世紀、六国が乱立する戦国時代末期の中国。秦王・政は天下統一を目指していた。幼なじみで政を愛する趙姫は彼の天下統一こそが民に平和をもたらすと信じ、燕国討伐の口実となる政の偽の暗殺計画を仕組むため、政に恨みを抱く太子・燕丹と燕へ下る。趙姫はそこで有名な暗殺者・荊軻と出会う。彼は過去を償う気持ちから、もはや人殺しをやめていたが、美しき趙姫に心動かされてゆく。一方、政は側近の長信侯の謀反や、宰相・呂不偉が実の父親だったという衝撃の事実を知るにおよんで徐々に心変わりしていく。趙姫の故国の趙で大虐殺を行った政を趙姫は見かぎり、荊軻と深い仲に。そして、荊軻は燕の使者として政を殺しに向かう。

 

山の郵便配達

那山那人那狗(Postmen in The Mountains) 
中国 / 1999年(日本公開2001年)/ 93分
監督:霍建起(フォ・ジェンチー)
脚本:思蕪(スー・ウー)
出演:滕汝駿(トン・ルゥジュン)/ 劉燁(リウ・イエ)/ 趙秀麗(チャオ・シュウリー)

緑濃い山奥の郵便配達の親子の姿を通して、家族の絆を描く

定年を迎えた父の、最初で最後の息子との「郵便配達の旅」。父と息子(と犬一匹)が山道を黙々と進み、淡々とした語り口で物語は進むのですが、この「黙々と歩く父親の姿」に、とても意味があると思いました。そんな父親との旅を通して徐々に成長していく息子。そして、そんな息子をやさしいまなざしで見つめる父親。二人の距離がどんどん縮まっていくのが分かりました。特に、父を負ぶって息子が川を渡るシーンの父親の表情が印象的。ラストの数分間も、セリフなんてなくても見る者にいろんなことが伝わってきます。

この作品、息子さんを持つ父親世代の私の知人が、「大好きな作品」 と言っていましたが、年を重ねてからまた観たいと思える作品です。

ストーリー1980年代初頭。中国湖南省の山岳地帯で長年郵便配達人を務めてきた父が、息子に仕事を引き継がせるため、息子と愛犬と共に最後の仕事となる「旅」に出る。重い郵便袋を背に、静かに語らいながら何日も山道を歩き続ける父と息子。仕事で留守がちだった父に心の隔たりを感じていた息子は、村の人々の信頼を集める父の姿、そして、一通一通に思いが込められた手紙を届ける大切さを知り、徐々に父への尊敬の念と仕事への責任感を深めていく。一方の父親も、いつのまにか立派に成長した息子の姿に感慨を深める。

 

きれいなおかあさん

漂亮妈妈(Breaking the Silence) 
中国 / 1999年(日本公開2002年)/ 90分
監督:孫周(スン・ジョウ)
出演:鞏俐(コン・リー)/ 高炘(ガオ・シン)

生活苦と闘いながら、難聴の息子を一人懸命に育てる母と子の物語

コン・リーが観たくて観ました。夫と離婚して生活は苦しく、耳が不自由な息子は普通の学校に入れてもらえない。それでも息子に言葉を教えながら必死に働く健気な母親コン・リーの演技が素晴らしかったです。

ほとんどノーメイクでちょっと太めで服装も地味なのに、どこか美しい。魅力的な女優さんですね。

息子は、補聴器をつけているためにイジメにあったりするのですが、お母さんと一生懸命生きている姿が本当にかわいい。「花(ホア)」の発音がようやくできるようになったときなんかは私も一緒になって喜んでしまいました。そして、そんな母子に優しく接してくれるファン先生の存在にも救われます。

息子役のガオ・シン君は、幼少時の医療ミスにより本当の聴覚障害児なんだそうです。本作が映画初出演とのことですが、コン・リーに負けないくらい引き付けられる魅力がありました。

北京が舞台なので、天安門の前を自転車で走るシーンとか、中国っぽい風景(違法の路上販売も含め)も、見ていて面白かったです。

ストーリー北京で、タクシー運転手の夫と離婚し、難聴の息子ジョン・ダーを育てる母イーリン。普通の小学校に通わせてやりたいと願うが、入学試験の結果は不合格。子どものいじめや家計の重圧に悩みながら、息子に言葉を教え、必死に働き、全力で息子に生きることの素晴らしさを教える。

 

こころの湯

洗操(Shower) 
中国 / 1999年(日本公開2001年)/ 92分
監督:張楊(チャン・ヤン)
脚本:張楊(チャン・ヤン)
出演:朱旭(チュウ・シュイ)/ 濮存昕(プー・ツンシン)/ 姜武(ジャン・ウー)

北京の下町の銭湯を舞台にした、親子、人々の人情悲喜劇

こころ温まる映画です。タイトル通り、観終わった後は、こころを洗い流してもらったような気分になります。中国にも、日本と同じような銭湯文化があったんですね。

ストーリーはシンプルですが、登場人物たちが様々な想いを抱えていて、じわじわと来るものがあります。特に長男は、故郷や家族と離れ、遠い深圳で自分の人生を生きている。弟の障害のことも妻には隠していて、負い目を背負って生きている。それでも、父親が倒れたのかと心配してかけつけては、銭湯での生活で徐々に自分を取り戻していく。彼の心の葛藤や気持ちの変化がとてもよく理解できました。

水が乏しい内陸地域で、花嫁が婚礼の前日に体を清めるために、両親が穀物と引き換えに貴重な水をかきあつめるエピソードなどは、さすが中国ならではという感じ。随所に「中国の急激な近代化」に向けられた監督のメッセージのようなものも感じられて良かったです。

ストーリー北京の下町で銭湯を営むリュウは、妻を早くに亡くし、知的障害のある次男アミンと暮らしていた。銭湯では、常連客たちがマッサージを受けたり、将棋をしたり、コオロギ相撲をしたりと、そこは一種の社交の場となっていた。ある日、深圳でビジネスマンとして働く長男ターミンが突然帰郷する。ターミンは弟から届いた葉書を見て父が倒れたのではないかと心配して帰ってきたのだった。しかしそれは取り越し苦労で、元気な父の姿を見て安心したターミンは、すぐに深圳の家族の元に帰ることにする。しかし、リュウが風邪で体調を崩したこともあり、ターミンは滞在を延ばして銭湯の仕事を手伝うことに。父親たちと生活を共にするうちに、ターミンは父の仕事の意義を理解し始める。そんな矢先、地域の再開発のため銭湯の取り壊しが決まり、さらに悲しい出来事が起きてしまう。

 

北京ヴァイオリン

和你在一起(Together) 
中国 / 2002年(日本公開2003年)/ 117分
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
脚本:陳凱歌(チェン・カイコー) / 薛暁路(シュエ・シャオルー)
出演:唐韻(タン・ユン)/ 劉佩奇(リウ・ペイチー)/ 陳紅( チェン・ホン)/ 王志文(ワン・チーウェン)

息子のヴァイオリンの才能を伸ばそうと奔走する父と息子の絆を描く

ヴァイオリンの天才的な才能を持つ息子と、息子の成功を必死に願う父親。いわゆる英才教育というよりは、この親子にはどこか純粋さや微笑ましさを感じ、見ていてつい応援したくなります。息子が父親の努力を無駄にしたときなどは、歯がゆい思いがしましたが、この親子の絆の強さは、ラストシーンに集約されているのでしょう。中国人が、田舎から都会北京に出てきたときの戸惑いや、中国の英才教育の競争の激しさも上手に描かれており、いかにも都会風の近所のお姉さんや、音楽の先生たちが個性的でいい味出しています。てっきりよくあるサクセスストーリーだと思っていたので、最後は意外でしたが、純粋なこの親子らしい。主演のタン・ユン君は実際にヴァイオリニストを目指している学生だけあって演奏シーンは圧巻でした。

ストーリー中国北部の田舎町。13歳の少年チュンは父親と2人暮らし。チュンは、幼い頃に亡くした母の形見であるヴァイオリンを上手に弾くことで評判だった。父親のリウはそんな息子に質の高いヴァイオリン教育を受けさせ、一流のヴァイオリニストにしてあげようと、必死に働き金を貯めていた。ある日、2人はコンクール出場のため北京へとやって来る。惜しくも5位に終わったチュンだったが、その裏には不公平な現実があった。息子の才能を確信したリウはあきらめず、有名な先生の個人授業を受けさせるため北京に移り住むことにする。慣れない都会での生活の中、練習に励むチュン。そんな息子を残して、田舎に帰ろうとする父親。やがて親子の隠された秘密が明らかになる。

 

ションヤンの酒家(みせ)

生活秀(Life Show)
中国 / 2002年(日本公開2004年) / 106分
監督:霍建起(フォ・ジェンチイ)
脚本:思蕪(スー・ウ)
出演:陶紅(タオ・ホン)/ 陶沢如(タオ・ツァールー)

頑張ってる女性にオススメ。問題を抱えながら大都会で気丈に生きる女性の物語

この作品は、たまたまテレビで放送されていて見入ってしまった記憶があります。人口3000万の大都市・重慶を舞台にしながら、街の片隅(旧市街)で生きる女性ションヤンを淡々と捉えた作品。情緒ある重慶の屋台街の風景と、主演のタオ・ホンさんが美しい。でも彼女の人生が実にやるせないのです。

本人はバツイチ。母親は彼女が幼い頃に亡くなり、父親は恋人と出て行く。兄夫婦は家庭崩壊で、兄は頼りにならず、兄嫁は憎い。大事に育てた弟は薬物中毒で更生施設へ。そして都市開発のため、自分の店は立ち退きを強いられる。そんな苦労を、ションヤンは誰に頼ることもできず一人で抱え、気丈に生きています。

「安らぎ」「頼れる男性」を求めているであろう彼女に、優しそうな常連客の男性が近づき、「ああ、これでションヤンは幸せになれるのかな」と思ったんですが…。どちらかと言うと女性受けする映画かもしれませんが、辛いことがあったときに、「もうちょっと頑張ってみよう」と思わせてくれる作品です。

ラストシーンの表情は、直前の、妊娠した若い従業員とのシーンの表情との対比が明確で彼女の健気さや希望を失わないたくましさが伝わってきました。

ストーリー中国の大都市・重慶の昔ながらの屋台街で、女手1つで「鴨の首料理」が売りのお店を切り盛りしているバツイチ女性ションヤン。綺麗で明るい彼女だが、家族のことで色々な悩みを抱えていた。母は弟を産んだ時に亡くなり、父は京劇女優と恋仲になり家を出た。兄夫婦は家庭崩壊の危機にあり、子供の世話をションヤンに押し付けてくる。母親代わりとなって育てた実の弟は薬物中毒で更生施設に。淡々と忙しく過ぎていく日々の中、ションヤンは自分を見つめる一人の常連客の存在に気付く。言葉を交わすようになり、ションヤンは次第に彼に惹かれていくが…。彼女が幸せになれる日は訪れるのだろうか。

 

緑茶

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緑茶(Green Tea) 
中国 / 2002年(日本公開2006年)/ 89分
監督:張元(チャン・ユアン)
脚本:張元(チャン・ユアン)
出演:趙薇(ヴィッキー・チャオ)/ 姜文(チアン・ウェン)/ 方力鈞(ファン・リジュン)

緑茶のショットが美しい、都会に生きる孤独な男女のミステリアスな物語

「中国第六世代」を代表するチャン・ユアン監督と、クリストファー・ドイルのカメラワークによるオシャレ系現代中国映画。都会に生きる孤独な男女の物語で、ヴィッキー・チャオのファンにはたまらない作品ですが、一般受けはしないかも。

地味な女子大生ウー・ファンが語る“友人”の正体は?ウー・ファンと、夜の街でピアノを弾く華やかな女性ランランは同一人物なのか?そんな謎を含みつつ物語は進んでいき、最後もはっきりと結論を語らない終わり方です。でも、ランランが「女を殴る女は最低」と平手打ちをするシーン、最後の磨りガラス越しのメガネなど、何となくにおわせています。

全編を通して、アップに耐えうるヴィッキー・チャオの美しさと、北京のオシャレなお店、グラスの中に広がっていく緑茶の美しさに見とれてしまう作品です。

ストーリー大学院で比較文学を研究するインテリ女子大生のウー・ファンは、ひっつめ髪にメガネ、肌を露出しない地味な服装で次々と見合いを繰り返す。たまたま彼女と見合いをしたミンリャンは、すぐに彼女に惹かれ、追いかけ始めるが相手にされない。そんなミンリャンに、ウー・ファンは母親に暴力をふるう父親を殺した友人の話を繰り返し語る。同じ頃、ミンリャンは、ホテルでピアノを弾き、奔放な異性関係を持つランランという女性と知り合う。しかしランランとウー・ファンがうり二つだったのでミンリャンは混乱する。果たして二人は同一人物なのか…。

 

小さな中国のお針子

巴尔扎克与小裁缝(Balzac et la Petite Tailleuse Chinoise)
中国・仏 / 2002年(日本公開2003年)/ 110分
監督:戴思杰(ダイ・シージエ)
脚本:戴思杰(ダイ・シージエ) / ナディーヌ・ペロン
出演:周迅(ジョウ・シュン)/ 陳坤(チェン・クン)/ 劉燁(リュウ・イエ) / 王双宝(ワン・シュアンパオ)/ 王宏偉(ワン・ホンウェイ)

文革時代、山村に送られた青年たちと、禁じられた文学との出会いで自我に芽生えていく少女の苦い青春を描く

中国ならではの歴史背景・風景の詰まった、地味だけどいい作品でした。文化大革命の時代に、知識層の青年が再教育のため農村に送られ、そこで出会った無垢な少女との苦い青春を、禁書である西洋文学への興味と絡めて描く。禁じられることでかえって増す、知識と外の世界への欲求が伝わってきます。

劇中、「1冊の本が人生を変えることがある」というセリフがありましたが、農村の娘が外国小説に触れるうちに自由に目覚め、最後には一人で村を出ていくほど、芯の通った女性へと変わっていきます。

農村の暮らしが貧しいとはいえ、愛する人を残し、山道を一人孤独に延々と歩いてまで、外の世界を求めるなんて、と最初は思ってしまいましたが、彼女の姿には何か教えられるものがあります。

全編を通して、中国の山岳地帯の風景が美しく、最後、三峡ダムのために村が思い出と共に湖底に沈んでいく映像は何とも切なかったです。

ストーリー1971年、文革の嵐が吹き荒れる中国。医者の息子であるルオとマーは、反革命分子の子として、再教育のため、四川省の奥深い山村へ送られた。2人はそこで過酷な肉体労働を強いられるが、ある日、仕立て屋の孫娘である美しい少女、お針子に出会う。学はないが利発で愛くるしいお針子に惹かれる2人。彼らは、文盲のお針子に物語を読み聞かせてあげたいと思い、同じく再教育で来ている若者が大量に隠し持っていた、禁書である外国小説を盗み出し、お針子に読み聞かせる。許されない秘密を共有することで結びつきを強める3人。そして、飛行機に憧れ、本能的に村の外の世界が広いことを知っていたお針子は、西洋文学が語る自由に次第に目覚めていくのだった。

 

ココシリ

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可可西里(Kekexili: Mountain Patrol)
中国 / 2004年(日本公開2006年) / 88分
監督:陸川(ルー・チュアン)
出演:多布傑(デュオ・ブジエ)/ 張磊(チャン・レイ)

チベットカモシカの密猟者を追う山岳パトロール隊の男たちの闘いを描く

これまたすごい作品に出合いました。チベット高原北部のココシリに棲息するチベットカモシカを保護するために無償で闘うチベットの男たちを描いた秀作。あまりにも衝撃的で、しかも実話が元ということで、見終わったときは言葉を失いました。まず日本では作れないだろう映像と題材という意味でも必見です。

男たちが闘う相手はもちろん密猟者なのですが、この作品では、自然の恐ろしさ、残酷さも容赦なく描かれています。特に、隊員の一人が流砂に飲まれるシーンは強烈に印象に残りました。

チベットカモシカの保護活動を維持するために、密猟されたその皮を売らなければならないという皮肉。密漁する側には、密猟しか生きる術がないという皮肉。こうした現実があることも思い知らされます。

あまりにも犠牲が多かったので、チベットカモシカの生息数が回復したというテロップが最後に流れたときは、救われる思いがしました。ぜひ多くの方に観ていただきたい作品です。

ストーリー中国最大の動物保護区ココシリは、海抜4700メートルの青海省チベット高原に位置し、チベットカモシカの生息地として知られている。しかし、この20年間の乱獲により、チベットカモシカの生息数は100万頭から1万頭に激減。チベット族の有志たちがパトロール隊を結成し、武器も車も食糧も乏しい中、命懸けで密漁の取り締まりに当たる。ある日、隊員の一人が密猟者に殺される事件が起き、北京からその調査にやって来た新聞記者のガイを連れ、リーダーのリータイ率いるパトロール隊は追跡活動に出かける。厳しい自然、密猟者との想像を絶する過酷な闘いが始まった。

 

胡同(フートン)のひまわり

向日葵(Sunflower)
中国 / 2005年(日本公開2006年)/ 132分
監督:張楊(チャン・ヤン)
脚本:張楊(チャン・ヤン)/ 蔡尚君(ツァイ・シャンジュン)
出演:孫海英(スン・ハイイン)/ 陳冲(ジョアン・チェン)/ 劉子楓(リウ・ツーフォン)

画家の夢を息子に託す父と、反発しながら同じ道を歩む息子の30年の葛藤を描く

BSでたまたま放送していて、どんなストーリーか知らずに観たのですが序盤から雰囲気が良く、そのまま飽きることなく最後まで観てしまいました。文化大革命で6年ぶりに家に戻ってきた父と、9歳の息子シャンヤン。文革により奪われた画家の夢を息子に託そうとする父と、厳しい父に反発しながらも同じ道を歩む息子の30年にわたる日々を描いたものです。

息子が反発したくなるのも分かるような頑固な父親なのですが、後半はむしろ切なさが増していきました。特に、32歳になった息子の初の展覧会を観に行き、何も言葉は交わさず、ただ息子と握手する姿にジーンときました。ようやくこれで幸せな親子の生活か、と思っただけに最後は意外な展開でしたが、文革という厳しい時代を経験した、あの時代の中国の父親の複雑な心理が伝わってきました。30年という時の流れの中、親子と共に変化していく北京の街並みも見ていて興味深かったです。

ちなみに胡同(フートン)とは、昔ながらの北京の住宅街で、細い路地と中庭を囲む平屋が特徴的な小さな共同体といった感じ。とても風情があるのですが、残念ながら今は開発のため取り壊しが進んでおり、この映画のラストシーンでも、そんな現代の様子が効果的に使われていました。

ストーリー1967年に北京の下町で生まれた向陽(シャンヤン)。シャンヤンが9歳になった日、文化大革命で強制労働にかり出されていた父親が6年ぶりに家に戻って来る。父は遊んでばかりの息子を厳しく叱りつけ、絵の勉強をさせようする。強制労働で手をつぶされ、画家の夢を奪われた父は、息子にその夢を託そうとしたのだ。シャンヤンは突然現われたそんな父に抵抗する。19歳になったシャンヤンは絵の才能を伸ばしつつあったが、恋人との仲を引き裂かれるなど、父への反発は続く。32歳になり、結婚して新進アーティストとして注目され始めた順調なシャンヤンだが、父との対立はなお続く。しかし息子の初の展覧会に訪れた父は、家族の絵に深く心を揺り動かされる。父と息子の心の溝が埋まりかけた矢先、父は姿を消し、メッセージを吹き込んだテープだけが残されていた。

 

SAYURI

SAYURI (Memoirs of a Geisha)
米・日・中 / 2005年(日本公開2005年)/ 146分
監督:ロブ・マーシャル
出演:章子怡(チャン・ツィイー)/ 楊紫瓊(ミシェル・ヨー)/ 鞏俐(コン・リー)/ 渡辺謙 / 役所広司 / 工藤夕貴/ 桃井かおり / 大後寿々花

恋焦がれる男性に再び会いたい一心で、苛酷な芸者の道を生きる少女の物語

これは中国映画と呼んでよいのか分かりませんが、中国三大美人女優の存在感がすごかったのでぜひ紹介。あまり期待せずに観たのに、想像以上に気に入ってしまった作品です。

中国人が日本人を演じて英語を喋る、という設定にもあまり違和感はなく、それ以上に、文句なしに美しい映像と芸者役の女優陣にうっとりしっぱなしでした。あんなに日本(京都)を美しく撮ってくれると、嬉しくなります。そして、チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、コン・リーの中国三大美人女優の存在感がすごいこと。特にチャン・ツィイーさん、まさにアジアン・ビューティーですね。ラストシーンの表情も、本当に素晴らしいと思いました。さゆり(チャン・ツィイー)の少女時代役の大後寿々花さんも大女優陣に負けないくらい光ってました。芸者の描き方とか、「こんなんでいいの?」と思う点はありましたが、「日本の美しさ」が大切にされていたと思える作品です。

ストーリー貧しい漁村に生まれた少女・千代は、9歳の時に花街の置屋に売られる。苛酷な日々の中、千代は「会長」と呼ばれる紳士に優しく声をかけられた。それを運命の出会いと信じた千代は、会長にもう一度会うために芸者になりたいと願うようになる。そして千代が15歳の時、芸者の中の芸者と称えられる豆葉に見出され、千代は芸者さゆりとして花開いていく。やがてさゆりは、客として現われた会長と再会するが、会長の親友の延がさゆりに恋をしてしまう。一方、同じ置屋の他の芸者たちも、さゆりに敵対心を燃やして罠を仕掛けてくる。そんな中、戦争が起き、芸者を引退して田舎で疎開することになったさゆり。終戦後、彼女を最初に迎えに来たのは延だったが、さゆりの長年の恋心は変わることはなかった。

 

胡同の理髪師

剃頭匠(The Old Barber)
中国 / 2006年(日本公開2008年) / 105分
監督:哈期朝魯(ハスチョロー)
脚本:冉平(ラン・ピン)
出演:靖奎(チン・クイ)/ 張耀興(チャン・ヤオシン)/ 王洪濤(ワン・ホンタオ)/ 王山(ワン・シャン)

93歳の理髪師の生活を静かに追いながら、「生」と「死」を考えさせてくれる作品

これは私が一番好きな中国映画と言ってもいいくらい、素晴らしい映画です。93歳の現役理髪師チン爺さんの静かな暮らしを描いているだけなのですが、何気ない会話や出来事から、「老い」「変化」「死」についてたくさん考えさせてくれます。

再開発のため家の立ち退きを迫られても、死が近いからと悠長に構えるチン爺さん。一方で、今後20年間有効の新しい身分証の写真映りを気にするあたりが何ともいじらしい。そして、毎日5分遅れるゼンマイ時計や、白髪にクシを入れる習慣がこの映画ではとても重要な要素になっていて、実にいいのです。

葬儀屋さんに電話して死の準備を始めるシーンは切なくもありますが、自分の略歴を力強く語ってテープに録音するチン爺さんからは、人生に対する誇りが伝わってきました。もっと自分が年をとったときに観たら、きっとまた違った感じ方があると思います。

主演のチン・クイさんは、92歳にしてこの映画がデビュー作。この映画では自分自身を演じているわけですが、表情やしぐさにとても胸を打つものがあります。見事なカミソリ捌きと、ジョリジョリと響く音が心地よく、胡同の古い町並みも情緒たっぷりです。

ストーリー93歳にして現役の理髪師チン爺さんは、北京の胡同の古い家に一人で暮らしている。若い頃は京劇俳優や日本軍の司令官の理髪もしたことがあるが、今は昔からのお得意さん数人を三輪自転車で回って理髪する日々。毎朝6時に起きて入れ歯をはめ、毎日5分遅れるゼンマイ時計を直し、鏡の前で白髪にクシを入れるのが日課。胡同地区の再開発のため家の立ち退きを迫られ、年老いた友人たちが死を迎えていく中、チン爺さんは「死」を近くに感じながらも、静かに暮らしていく。

 

ラスト、コーション

色、戒(Lust, Caution) 
米・中・台 / 2007年(日本公開2008年)/ 158分
監督:李安(アン・リー)
脚本:王蕙玲(ワン・ホイリン)/ ジェームズ・シェイマス
出演:梁朝偉(トニー・レオン)/ 湯唯(タン・ウェイ)/ 王力宏(ワン・リーホン)/ 陳冲(ジョアン・チェン)

命を狙われる孤独な男と、命を狙う孤独な女の激しく悲しい恋物語

「ラスト、コーション」というタイトルは、日本語にすると「肉欲、警告」。そんな漢字の持つイメージがピッタリの作品でした。序盤から空気感がすごく、引き込まれます。

話題となったトニー・レオンとタン・ウェイの過激なベッドシーンは、ここまでやらなくても…と思ってしまいましたが(タン・ウェイはこの体当たり演技のために中国映画界を事実上追放される)、でも2人の孤独さゆえの激しさのような気もしました。

数年がかりの暗殺計画が、あと少しで達成できるというときの必死の決断と悲しい結末。後味は悪いですが、終盤の男女2人の心の葛藤に思わずため息です。

ストーリー1939年、日本の中国侵略を逃れて香港に集団移住した女子学生ワン・チアチーは、香港大学の演劇部で愛国劇を上演した仲間たちと抗日グループを作り、日本の傀儡政府のスパイのトップであるイーの暗殺計画を立てる。チアチーはイーの誘惑に成功するが、暗殺遂行直前にイーが昇進して上海に去り、暗殺は未遂に終わる。さらに計画がバレたイーの手下を仲間が殺害してしまった衝撃から、チアチーは仲間たちの元を去る。時は流れ1942年、上海の叔母の家で暮らすチアチーを見つけたかつての仲間たちは、再びチアチーをイーの暗殺計画に誘う。チアチーは再びイーに近づき、たちまち2人は男女の関係を結ぶが、次第に恋愛感情が本物になっていく。イーはチアチーにダイヤの指輪を贈る約束をし、チアチーは仲間が見張る宝石商にイーをおびきよせる。しかし、チアチーは任務を遂行せず、イーを逃がすのだった。チアチーの正体を知ったイーは、込み上げる感情を抑えながら、チアチーたちの処刑を部下に命じた。

 

さくらんぼ 母ときた道

桜桃(Cherries) 
日本・中国 / 2007年(日本公開2008年)/ 107分
監督:張加貝(チャン・ジャーベイ)
脚本:鮑十(パオ・シー)
出演:苗圃(ミャオ・プー)/ 妥国権(トゥオ・グゥオチュアン)/ 龍麗(ロン・リー)

知的障害を持つ母から娘への大きすぎる愛

知的障害を持つ妻と足の不自由な夫。この若くて貧しい夫婦の間には、なかなか子どもができないのですが、ある日、妻が捨て子を拾ってくることで物語が始まります。この母親役の女優さんの演技がとにかくすごいです。心から子どもを欲しがっていただけに、「我が子」を得たときの喜び、失ったときの悲しみが痛いほど伝わってきました。

思春期を迎えた娘が徐々に知的障害の母の存在を恥ずかしくうとましく思い始め、そしてそんな娘の変化に気付きながらも、どう対応してよいかわからず、ひたすら無垢な愛を注ぎ続ける母。見ていて本当に哀しいものがありましたが、それでもやっぱり、母の大きな愛情と偉大さにはかなわないと最後には思い知らされます。

この母親役、ノーメイクで髪はボサボサで決して綺麗ではないのですが、実はミャオ・プーという有名な美人女優さんが演じていたのがまた驚きでした。

大人になって初めて、昔の母親の愛情に気付くことってありますよね。娘の立場として、もう一度観たい作品です。

ストーリー1980年代、美しい棚田が続く中国雲南省の農村。知的障害を持つ桜桃(インタウ)と足の不自由な葛望(グォワン)の貧しい夫婦には子どもがいなかった。ある夜、さくらんぼの木の下で泣いている赤ん坊を見つけたインタウは、家に連れ帰り育てると言い出す。しかし夫は、生活の苦しさから黙って赤ん坊を里親にあずけてしまう。あまりのショックに半狂乱になって町へ探しに行くインタウ。夫もその熱意に負け、二人は赤ん坊を取り戻し、紅紅(ホンホン)と名付けて育てることになる。何をするのも母と一緒のホンホン。しかし小学生になった頃から、みんなと違う母を恥ずかしく、うとましく思うようになる。母と娘の愛がすれ違っていったある日、高熱で病院に運ばれた娘に、母は山からさくらんぼを採って持って行く。甘いさくらんぼを一口食べた娘の心には、今までの母とのやさしい思い出がよみがえり、母を恥じたことへの後悔と感謝の気持ちがあふれる。

 

花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)

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梅蘭芳(Forever Enthralled) 
中国 / 2008年(日本公開2009年)/ 148分
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
脚本:厳歌苓(ゲリン・ヤン)
出演:黎明 (レオン・ライ)/ 章子怡 (チャン・ツィイー)/ 孫紅雷 (スン・ホンレイ)/ 陳紅 (チェン・ホン)/ 王学圻 (ワン・シュエチー) / 余少群 (ユィ・シャオチュン)/ 安藤政信 / 六平直政

実在した京劇俳優・梅蘭芳の壮絶な生涯を描いた伝記映画

私自身、京劇にはそれほど興味がないのですが、芸一筋に生きる役者たちの世界というのは面白い。「さらば、わが愛」と同様、この映画を観ると、京劇が中国でいかに絶大な支持を得ているかが分かります。

「さらば、わが愛」のレスリー・チャンとコン・リーに比べると、レオン・ライ、チャン・ツィイーのインパクトは弱かったですが、青年時代を演じた余少群 (ユィ・シャオチュン)は、本物の京劇俳優かと思ってしまうほどの演技と色気で前半は京劇の世界に引き込まれました。

日本人俳優、安藤政信さんの中国語での演技もすばらしい。その後も中華圏で活躍されているようなので、今後が楽しみです。

ストーリー京劇の名門一家に生まれた梅蘭芳(メイ・ランファン)は、早くに両親を亡くし、伯父に育てられる。だが、伯父は些細なことで罪に問われ、梅蘭芳に手紙を残して処刑されてしまう。10年後、清朝崩壊後の中華民国。梅蘭芳は女形のスターに成長するが、伝統重視の京劇の世界に疑問を抱いていた。ある日、彼は海外で学んだ政府高官の邱(チウ)の講演を聞いて感銘を受け、これからは京劇にも改革が必要だと思い知る。梅蘭芳と邱は義兄弟の契りを交わすが、伝統を重んじる師匠の十三燕はそれを快く思わない。2人が劇場で対決すると、梅蘭芳が観客の心を掴んで勝利し、十三燕はその直後に急死する。数年後、スターとして円熟期を迎えた梅蘭芳は、邱と共にアメリカ公演を計画。だがその頃、彼は男形女優の孟小冬と愛を深めていた。次第に京劇界の付き合いを拒むようになっていく梅蘭芳。孟小冬との関係が梅蘭芳の妨げになると感じた邱は、梅蘭芳の妻、芝芳を小冬のもとへ差し向け、小冬は梅蘭芳のもとを去ってゆく。やがて開催されたアメリカ公演は大成功。しかし、小冬の件を知った梅蘭芳と邱の間には溝が生まれる。1937年、日本占領下の中国。邱と別れて上海に住んでいた梅蘭芳を、日本軍の田中少佐が訪れる。彼を占領政策に利用する計画だったが、梅蘭芳はそれを拒否。田中は邱に梅蘭芳の説得を依頼する。追い詰められた梅蘭芳は命の危険を冒して自らにチフスを注射し、病床に伏してしまう。その枕元で、心の支えにしてきた伯父の手紙を邱に見せる梅欄芳。その愛情溢れる手紙に邱は胸を打たれる。1945年、日本が降伏すると梅蘭芳は舞台に復帰。満員の客席には、幕が開くのを万感の思いで見守る邱の姿があった。

 

狙った恋の落とし方。

非誠勿擾(If You are the One) 
中国 / 2008年(日本公開2009年)/ 125分
監督:馮小剛(フォン・シャオガン)
脚本:馮小剛(フォン・シャオガン)
出演:葛優(グー・ヨウ)/ 舒淇(スー・チー)/ 範偉(ファン・ウェイ)/ 徐若瑄(ビビアン・スー)

中国に北海道ブームをもたらした大ヒット「婚活」映画

この映画の見所は、セリフの面白さ(奥深さ)と北海道の美しさ。コメディのようでコメディでない、切ないラブストーリです。中国では大ヒットした作品なのに、日本であまり話題にならなかったのはこの邦題のせいかもしれません。

グー・ヨウ演じる主人公は、50歳手前のスキンヘッドのおじさんで、ビジュアル的にも 「え、このおじさんのラブストーリー?」と最初は思ってしまうのですが、そんな見た目とは裏腹に、とっても人が良くて、憎めないおじさんなのです。そんな主人公の純粋さを、もっとタイトルに表して欲しかったなと思います。あまりの大ヒットに続編も作られたので、こちらも要チェックです。

ストーリー40代独身の男チン・フェンは、紛争を解決すると称する発明品を投資家に売ったことで大金を得る。その勢いでネットに恋人募集の広告を出し、「理想の妻」を探す旅を始める。見合いに現れたフライト・アテンダントの美女シャオ・シャオは、既婚男との不倫に傷つき疲れ、男と別れる決心をし、チン・フェンを北海道への感傷旅行に誘う。チン・フェンの人の良さと自分への思いに慰められていくシャオ・シャオだが、別れた男のことが忘れられずチン・フェンの元を去ろうとする。

 

小さな村の小さなダンサー

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Mao’s Last Dancer
オーストラリア / 2009年(日本公開2010年)/ 117分
監督:ブルース・ベレスフォード
脚本:ジャン・サーディ
出演:曹馳(ツァオ・チー)/ 陳冲(ジョアン・チェン)/ ブルース・グリーンウッド / アマンダ・シュル/ グオ・チャンウ / ホアン・ウェンビン

中国農村出身の名バレエダンサーの激動の半生を綴った自伝を映画化

これはすみません、中国映画ではないですね。でもぜひご紹介したい作品。

原作『毛沢東のバレエダンサー』を読んでから観ました。原作に比べ、幼少期の農村での生活の苦しさ、家族の絆、幼くして家族と引き離された北京での学校生活の辛さがあっさりと描かれていた分、最後、亡命に至るときの主人公の葛藤があまり伝わってきませんでしたが、それでも、バレエシーンの見応え、緊迫感は、映画ならではでした。

主演は、実際に中国出身で英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなったツァオ・チーが演じており、バレエシーンは本当に素晴らしいです。

最後、映画『リトルダンサー』のように、両親が息子の舞台を見にはるばる田舎からやって来るのですが、その演目の曲が個人的に残念だったポイント。感動的な場面だけに、もっと染み入るような曲で観たかったです。

文化政策により、たまたま政府に選ばれてバレエの英才教育を受け、貧しく閉鎖的な中国の農村、大都会北京、そして自由の国アメリカでこのような激動の人生を送ったバレエダンサーがいたことに驚かされる作品です。

ストーリー1961年、中国山東省の貧しい村で7人兄弟の6番目として生まれた少年、リー・ツンシン。ある時、毛沢東夫人・江青が始めた文化政策を進めるべく、バレエの才能発掘が全国で展開され、リーの村にも北京から視察団がやってくる。そして、小学校の先生の推薦で、バレエを一度も見たことのないリーが選ばれる。家族と離れ、北京の舞踏学校に入学したリー。最初は落ちこぼれていたが、恩師との出会いを通じ、やがてバレエの素晴らしさに目覚め、踊りにのめり込むようになる。時代が移ろい、改革開放が進む中、青年となったリーにアメリカでのバレエ研修のチャンスが訪れる。自由の国アメリカでの体験はリーの心に大きな変化をもたらしていく。

 

海洋天堂

海洋天堂(Ocean Heaven) 
中国・香港 / 2010年(日本公開2011年)/ 98分
監督:薛暁路(シュエ・シャオルー)
脚本:薛暁路(シュエ・シャオルー)
出演:李連杰(ジェット・リー)/ 文章(ウェン・ジャン)/ 桂綸鎂(グイ・ルンメイ)

癌に侵され余命数ヵ月の父と自閉症の息子の物語

ジェット・リー主演ということと、ストーリーに惹かれて観ました。ジェットがカンフーを封印し、病に侵されながらも自閉症の息子を一人で育てるやさしい父親を演じています。

妻には先立たれ、自分は癌で余命わずか。自分が死んだら身寄りをなくす自閉症の息子。最初このストーリーを読んだときは、「辛い…。自分だったら耐えられない」と思いましたが、映画の中のジェットと、彼を見守る周囲の人々のやさしさに、勇気づけられた人も多いのではないでしょうか。そして、そんな父の愛情を理解していないようで実は理解していて、最後には「一人で生きていける」という希望を感じさせてくれる息子ターフーの姿が感動的でした。

「平凡にして偉大なる すべての父と母に捧ぐ」という、シュエ監督のメッセージがまたよく、彼女は北京電影学院の大学院生だった頃から14年間続けた自閉症患者施設でのボランティア経験をもとにこの脚本を書き、映画化するに当たって、この業界で一番自閉症児を理解している自分が監督するしかない、と初めてメガフォンを執ったそうです。ジェット・リーも脚本に感動してノーギャラで出演を受けたほどで、この映画に関わった方々の思い入れが伝わってくる作品でした。

ストーリー47歳の水族館職員ワン・シンチョンは、妻に先立たれ、自閉症と知的障害を持つ21歳の息子ターフーを男手ひとつで育ててきた。自分が癌に侵され余命わずかであることを知り、息子と海で心中を試みるが命をとりとめる。シンチョンは残されたわずかな時間で息子に生活の術を一つひとつ教えようと決心し、そんな彼らを周囲の人々は温かく見守り支えるのだった。

 

孔子の教え

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孔子(Confucius) 
中国 / 2010年(日本公開2011年)/ 125分
監督:胡玫(フー・メイ)
脚本:陳汗(チェン・ハン)
出演:周潤發(チョウ・ユンファ)/ 周迅(ジョウ・シュン)/ 陳建斌(チェン・ジェンビン)

儒教の祖として知られる孔子の半生とその思想を描く

孔子が50代で魯の大司寇、国相代理になった頃から亡くなるまでの期間を描いています。意外にも、中国映画でこれまで孔子を描いた作品はほとんどなかったとのこと。論語の言葉はいくつか知っていますが、孔子がどんな人生を送ったかは知らなかったので興味深かったです。

前半は、政治的エピソードや戦闘シーンがあり、孔子が思想家であるだけではなく、政治家の策士としての才能もあったことを初めて知りました。そして後半の過酷な旅を通して描かれる弟子たちとの師弟愛がとても印象的。

孔子の言葉、理想のリーダー像を学びたい人にオススメの作品です。

ストーリー紀元前501年の中国。晋・斉・楚の大国3国に隣接する小国・魯の国政は、権力を握る三桓と呼ばれる3つの分家により混乱していた。君主・定公は安定した国を築くため、孔子に大司寇の位を授ける。孔子はその期待に応え、次々と改革を進める。古い慣習の撤廃や新しい礼節の制定だけでなく、斉との同盟条約を無血で締結させ、外交でも力を発揮した。孔子の非凡な才能は各国に伝わり、他国の為政者は孔子に関心を寄せる。中でも衛の君主の妻で実質的な権力者である絶世の美女・南子は孔子を気に入り、自国に引き込もうと画策する。衛や斉から孔子を招聘したいという書簡が次々と届き、孔子の功績は三桓も認めるところとなる。紀元前498年、孔子は国相代理となると、三桓の影響力を弱めようとひそかに動き出す。しかし、孔子の弟子・公伯寮の密告により、そのことが三桓に知られると、三桓は定公を抱き込み、孔子を魯から追い出す。孔子は家族を残し旅に出るが、そこへ多くの弟子たちが合流。一行の旅の先には数々の出会いと別れが待ち受けていた。

 

まとめ

いかがでしたか?改めて振り返ると、「變臉」「胡同の理髪師」「ココシリ」など、超メジャーではない隠れた名作が個人的には好きなようです。皆さんの好きな中国映画があった場合も、なかった場合も、ひとつの参考にしていただければ幸いです。

やはり中国映画は第五世代からの勢いがすごいですね。冒頭で書いた北京の「中国電影博物館(※2007年にオープンした世界最大規模の映画博物館)」では、1905年の中国映画の誕生からの100年の歴史が紹介されていて、とても興味深かったです。中国政府が映画産業に力を入れているだけあって、ものすごい展示の量でした(1階~5階、計20コーナー、見学通路は単純計算で約3キロにもなり、私は2日に分けて見学しました)。このあたり、もっと掘り下げて書きたいのですが、北京滞在時に書いていたブログが消えてしまい、詳細をレポートできないのが残念!写真もたくさん撮ったんですけどね。これまでの中国映画作品がぎっしりとパネルで紹介されていたり、有名作品のセットや衣装が展示されていたりと、中国映画ファンなら感動すること間違いなしのこの博物館。こんなご時世ですが、機会があればぜひ行ってみてください。

今回紹介しきれなかった2010年以降のおすすめ作品は、第二弾で紹介したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

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